銀座のクラブを例に風俗営業許可申請について解説 

昨今、俳優の香川照之さんの銀座のクラブでの行動に関して各種メディアが批判しておりますが、一方で2ちゃんねる創設者のひろゆきさんは、「キャバクラって、そういうところでしょ、ある程度性的なものを売ってて、それで金を貰ってるんでしょ」とも発言しております。

これに関連して、そもそも銀座のクラブというのはどういう許可取得して営業しているのか、そのお店ではどんなことができるのかについて、風営法の専門家である行政書士が解説します。

1,銀座のクラブはどういった許可を取得して営業しているのか

一口に銀座のクラブとはいっても、色々なお店がありますが、ここでは銀座で一般的な下記のようなお店について検討したいと思います。

<一般的な銀座のクラブの例>
・広さは10~30坪くらい。
・客室の大半はボックス席。
・ママと従業員の女性が客の前もしくは横のイスに座って、お酌・おしゃべり・カラオケなどをするお店。

<どういった許可を取得しているのか>
①飲食店営業許可
②風俗営業許可(1号・社交飲食店)

2,風俗営業許可とはどういった許可で、何ができるのか

上記の通り、銀座の一般的なクラブは、保健所で飲食店営業許可を取得し、その後、警察署(公安委員会)から風俗営業許可を取得し、営業をしているお店がほとんです。

飲食店営業許可でできることは一般の方でも想像できると思いますが、風俗営業許可でできる内容は、一般の方のイメージとは少し異なるのでないかと思います。

①風俗営業許可とは?

風俗営業許可というと、一般の方は、おそらく「風俗=性的なサービスができること」と想像するのではないでしょうか。

しかし、風営法における風俗営業というのは、性的なサービスができる営業では決してありません。

風営法において、性的なサービスに関連する営業は「性風俗関連特殊営業」と定義されており、警察(公安委員会)が許可をする営業ではありません。
(ただし、届出という特殊な形で、一定の厳しいルールのもと、認めている現状はあります)

では、銀座のクラブが取得している風俗営業許可とは、いったいどういう許可なのでしょうか。

風俗営業は内容によって、1号から5号まで分類されますが、銀座のクラブは1号に該当し、下記のように風営法で定義されております。

<風俗営業1号>
キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業

※参考(その他の風俗営業)
風俗営業2号 低照度飲食店
風俗営業3号 区画席飲食店
風俗営業4号 麻雀店・パチンコ店
風俗営業5号 ゲームセンター等

②何ができるのか?

上記に記載の通り、「客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業 」ができるということになります。

決して、性的なサービスができるとは書かれていませんので、そういったサービスは絶対NGです。

でも、「接待」に多少のお触りは含まれるんじゃないの?と思う方もいると思うので、

次に「接待」とは何かについて解説します。

③接待とは何か?

「接待」の定義について、風営法では下記のように定義されております。

「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」

具体的には、警察庁より公表されている「風営法の解釈運用基準」により下記の通り示されております。

1)談笑・お酌等

(接待に当たる行為)
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為

2)ショー等

(接待に当たる行為)
特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為。

3)歌唱等

(接待に当たる行為)
特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為又は客と一緒に歌う行為。

4)ダンス

(接待に当たる行為)
特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為は接待に当たる。
また、客の身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と一緒に踊る行為。

5)遊戯等

(接待に当たる行為)
特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。

6)その他

(接待に当たる行為)
客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為。
客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為 。

④接待の中にお触りが含まれるか関して

ここまで見ると、ダンスをする場合は身体に触ったり、それ以外でも身体を密着させたり、手を握る行為は「接待に当たる」と書いているから、やっぱり多少のお触りはありじゃないかと思う人も多いでしょう。

結論を言えば、その通りですが、「接待」はあくまでお店側が客の同意のもとしてよいのであって、客側がお店のスタッフの意向を無視して、触ってよいわけでありません。

また、あくまで①ダンスをする際に接触したり、②横に座った際に、体の側面が触れ合ったり、③せいぜい手を握る程度までが認められているに過ぎないのであって、今回、香川照之さんが問題となっているような①ブラジャーを脱がせたり、②胸を触ったりする行為までは認められておりません。

3,銀座のクラブは誇りをもってよい仕事 だからこそ、ルールは守ろう!

以上、みてきたように、銀座のクラブは、決して、性的なサービスができるお店ではありません。

風俗営業という名前の響きがよくありませんが、正確には、風俗営業の中の「1号(社交飲食店営業)」という部類になるのです。

社交飲食店で働く人たちの中には、昼間働いている会社員よりも、時世に勉強熱心で、経済ニュースの会話も自然にできる方たちも少なくありません。コミュニケーション能力もそこいらの営業マンより優れています。

ひろゆき氏に言われたくらいで、卑屈になる人はいないとは思いますが、誇りをもって仕事をして頂ければと私は考えておりますし、クラブで働く人たちを尊敬もしております。

一方で、今回の香川氏の件は、本人ももちろん悪いのですが、風営法的には、お店の責任者であるママが止める義務があったのに、やらなかったのが問題です。

風営法東京都施行条例で、下記の条文があります。

「風俗営業者は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
営業所で卑わいな行為その他善良の風俗を害する行為をし、又はさせないこと。」

今回の香川氏の行為は上記の卑わいな行為に該当しますので、ママは止める義務があったのですが、
止めていないのは、いくら上客とはいえ、風営法違反はもちろん、お店の品位が下げる対応です。
(ちなみに、この条例義務を守らない場合、3~4か月の営業停止処分に処されます)

銀座だけではないですが、クラブを開くお店の責任者の方は、品位と誇りを守るためにも
しっかりとルールを守って営業して頂きたいと思います。

4,(最後に) 社交飲食店を新しく開きたい方向け

現在クラブ等で働いている方の中には、将来お店を持ちたいと準備している方はたくさんいると思います。

実際にお店を借りた後、風俗営業(社交飲食店)の許可を取得するのは、素人では正直かなり難しいです。

お店を借りた後、一日でも早く営業許可を取得したいとお考えの方は、風営法のプロである

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