死後事務手続と相続①

私事になりますが、先日(令和5年4月下旬)、当職の父が他界しました。

クライアント様の情報は、WEBサイトで公開することはできませんが、今回は気持ちの整理を兼ねて、自分自身を例にして、死後事務手続きと相続手続きについて、行政書士の立場も踏まえて、解説したいと思います。

1,亡くなった後、まずやること

私の父は、「ガン」のため、病院で亡くなりました。

急な容態の悪化と、病院が遠距離であったことから、残念ながら私は父の最後を看取ることはできず、病院からの深夜の電話連絡にて、その事実を知りました。

突然の訃報で悲しみに包まれましたが、悲しんでばかりもいられないので、落ち着いて、これからのことを考えました。

私は、長男であり、父は離婚していたため、葬儀は私が喪主を務める必要があったため、中心になって動かねばなりません。

すぐに、やらねばならないこと

①当面の間(1週間程度)の仕事の引継ぎ

②葬儀の形態を決める(一般葬、家族葬、一日葬、直葬)

③葬儀の宗教を決める(仏式、神式、キリスト教式等)

④葬祭業者を決め、打ち合わせをする(式場、日程、規模、予算等)

⑤関係者への告知(電話、FAX、メール、新聞広告等)

上記①~④については、基本的に、亡くなった当日中に決める必要があります。自宅で亡くなった場合は、別として、病院で亡くなった場合は、遺体の搬送をする必要があるからです。

私もそうでしたが、忙しい方や事業を営む方の場合、まず、①の仕事の引継ぎが大変です。

その上で、一番身近な親族(亡くなった方の配偶者、子、兄弟姉妹)で連絡を取り合い、②~④を早急に決めます。

私の場合は、父が生前に積み立てをしていた葬祭業者もあり、家の菩提寺もありましたので、ある程度はすぐに決まりましたが、葬儀の形態に関しては多少親族で議論があり、個人的には予算や時間の関係上、一般葬ではなく家族葬で良いのではないかと思いましたが、父の兄弟姉妹の意向もあり、一般葬で執り行いました。

結果論にはなりますが、 私は一般葬にして良かったです。
お通夜や葬儀で父の昔の同僚や友人と話す機会に恵まれ、また弔辞を読んで頂くことで、思い出と悲しみに包まれたお別れをすることができたと思っております。

ご提案したいこと

ここで、ご提案したい事としては、遺族のためにも、ご高齢になった場合は、死後すぐ発見できる「エンディングノート」等に、死後の葬儀についても、形態、規模、呼んでほしい人等、記載して残しておくことです。

もちろん、最低限その費用についても、遺族に残すべきです(銀行カードの暗唱番号も記載しておきましょう)が、万一葬儀費用も残せない場合は、それを踏まえた上で、ご意向を記載し、どうするかの判断を喪主に委ねるとの記載もしておくべきでしょう。

一方で、親族がご高齢になり、あなたがまだお元気であれば、切り出しづらいかもしれませんが、親族で事前に、死後の葬儀を含め、様々なことについても話し合う機会を設けてみるのもいいと思います。

私の場合も、むしろ、生きて元気な内に、死生観、人生観等、色々、父と話し合いたかったなと、個人的には後悔しております。

※「エンディングノート」とは、自分の人生の終末について記したノートのことです。万が一に備えて、家族や友人に伝えておきたいことや自分の希望などを書き留めておきます。遺言書との違いは、法的効力があるかないかです。どちらも遺産相続などについて希望を書くことができますが、遺言書の内容は法的に強制力があり、エンディングノートには法的な強制力はありません。

2,葬儀費用と預金の引き出しについて

葬儀やお布施の具体的費用に関しては、今回は解説しません。
地域差も非常にありますし、解説している本やネット記事も多くありますので、そちらをご参照ください。

ここでは、葬儀費用やお布施の立替えをどうするかについて簡単に解説します。

喪主(施主)の方が、金銭的に余裕のある方であれば、立替えれば済むことですが、そうでない場合は、悩まれることと思います。

特に、亡くなった方の銀行口座からお金を引き出してよいのか、凍結はされていないか、についてです。

まず、ほとんどの銀行はこちらから伝えるまで、死亡した事実は把握できず、口座が凍結されることはありません(ただし、新聞広告等で葬儀の案内を出すと、その時点で把握され、凍結の可能性はあります)。

そして、銀行の暗唱番号を知っている場合は、相続人であればATMで引き出しても違法ではありません。
(なお、窓口では、通帳と印鑑がある場合でも、ご本人以外は門前払いになる可能性が高いです)

ただし、違法ではないと言っても、他にも相続人がいる場合は、後に揉める可能性が高いので、葬儀費用の範囲内での引き出しまでに抑えるべきでしょう。そして、支払った場合は、きっちり領収書を残しましょう。

万一、口座が凍結された場合は、原則として、名義変更手続き(相続人が複数いる場合は遺産分割協議が必要)を行う必要があります。

なお、2019年に施行された預貯金の払戻し制度を活用すれば、名義変更手続き前でも、以下の金額まで預貯金を引き出せますが、名義変更手続きと同じくらいの必要書類があるため、遺産分割で揉めるような事態でなければ、名義変更手続きをした方がいっそ早いです。
(この制度を活用しても、引出しできるには、亡くなってから、最低1ヶ月くらいはかかるとみた方がよいです)

引き出し上限額=相続開始時の預貯金残高×1/3×払戻しを受ける相続人の法定相続分

(参考)三井住友銀行 預金の払戻し制度を利用する際の必要書類

3,葬儀等の流れ

一般的な葬儀の流れ

死亡当日 仮通夜(身内のみ)
2日目  通夜
3日目  葬儀・告別式・火葬 ⇒還骨法要

私のケースの流れ

死亡当日 仮通夜(身内のみ)
2日目  仮通夜(身内のみ)
3日目  通夜
4日目  葬儀・火葬 ⇒還骨法要・初七日法要

私の場合は、火葬場の予約が取れなかったこともあり、葬儀は死亡後4日目に行いました。
また、地域ルールもありますが、最近は初七日法要も同日に行う方が増えております。

喪主を務める方は、要所要所で挨拶する必要があります。葬儀屋さんからもらう定型文を参考に多少オリジナリティを入れて、がんばりましょう!

4,死後事務委任契約について

葬儀が終わった後には相続手続きがありますが、そちらについては、また後日、記事を書く予定です。

今回の記事では、最後に「死後事務委任契約」について多少解説します。

人によっては、死後の葬儀等を任せられる家族や親族がいない方、もしくは親族には任せたくない方もいると思います。そういった方のために、「死後事務委任契約」という方法があります。

「死後事務委任契約」とは、死後に発生する「相続手続き以外の事務処理」を生きている間に、信頼できる人に委任する契約です。

具体的には、死亡届等の行政への提出(各種返納手続き含め)、葬儀(葬儀形式含め)の手配、関係者への連絡、遺品処分に関する注文、家賃・医療費等の精算等を、委任することができます。

死後事務委任契約は、誰とでも結ぶことができますが、職業として相続関係の手続きに詳しく、最後まできっちりと執行する高い倫理観と責任感を持つ方に依頼するのが安心だと思います。

当事務所においても、死後事務委任契約を受任することも可能ですので、死後事務に関して、お悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

→ 新宿行政書士事務所 03-6675-9016

(電話によるご相談は無料です)